11th定演 第3部 解説

1.ラフマニノフ 『幻想的小品集』 から 「前奏曲」(鐘)
クレムリン宮殿の鐘に触発されて作曲したといわれ、彼自身が初演しました。ベルン条約を批准していなかったロシアでは、出版社から印税を受け取れず、わずか40ルーブルの報酬だけでした。アンコールに「シー・シャープ」と声がかかるほどの評判で、他のピアノ曲がかすんでしまうのを嫌いましたが、自作自演を遺しています。

2.モーツァルト 「ピアノソナタ 第10番」 から 第1楽章
続く2つのソナタとともに、パリで作曲されたと考えられてきましたが、自筆譜の研究成果から、ザルツブルグからウィーンへ、飛び出した頃の作品であることが明らかになっています。ザルツブルグでの生活にけりを付けて、音楽家としての自由と成功を勝ち取りつつあった幸せが溢れ、この時代の彼を象徴するような「華」が感じられます。

3.シューマン 「ピアノソナタ 第2番」 から 第4楽章
形式的な枠組には当てはまらない作品が多いシューマンですが、コンパクトにまとまったソナタらしい曲に仕上がっています。オクターヴ奏法のトレモロが主題で、「プレスト」と題された初稿は、十度以上の跳躍や、ラフマニノフのような広い和音などが多用された難曲のため、クララの提案でシューマンが撤回し、死後に出版されました。

4.ベートーヴェン 「ピアノソナタ 第8番」(悲愴) から 第2楽章
3大ピアノソナタの1曲である「悲愴」は彼自身が名づけた数少ない標題で、ピアノソナタでは他に「告別」だけです。人間的な感情表現が豊かで、ロマン派のピアノ書法の原点の一つとみなせ、ピアノのロマン的な特性の利用に初めて成功した曲と言えます。「第5番」やモーツァルトの「第14番」との関連性が指摘されています。

5.ドビュッシー 『2つのアラベスク』 から 「第2番」
「アラベスク」とはアラビア風や唐草模様を意味する言葉です。飛び跳ねるような軽やかなリズムが全曲を支配し、様々に異なる長さのフレーズの組み合わせで、単調になるのを避けています。第1番と共通したリズムモチーフを用いていることも興味深く、同じ時期の「ベルガマスク組曲」の質感に通じる、バロック的な世界をもっています。

6.ショパン 『練習曲 作品10』 から 「第3番」(別れの曲)
「こんなに美しいメロディーを自分の人生で書いたことがない」と、ショパン自身が語ったと弟子のグートマンが伝えています。この曲を練習していた彼の腕をとったショパンが「おお、わが祖国よ」、と叫んだという話も残っています。当初の構想では、もっと軽妙な音楽でしたが、最終的にゆっくりしたものに改められました。

7-1.モーツァルト 「メヌエット ト長調」
1曲目は父レオポルトが「ナンネルの楽譜帳」に書き入れた、最初期のピアノ小品の一つです。
7-2.モーツァルト 「メヌエット ニ長調」
2曲目はピアノソナタ第17番の第3楽章に入ると考えられていますが、成立の事情がわからず、自作目録にも未記載です。謎に包まれたこの曲は「安住の地を得ずに、モーツァルトの作品の世界をうろついている」と評されています。

8.ショパン 「ノクターン 第16番」
献呈されたスターリングは、ショパンを熱烈に信奉する弟子で、彼に恋愛感情を抱いていました。二人が出会った頃の作とみられているこの曲は、星の瞬きのような一音から始まり、広いアルペジオの伴奏で、右手が悠々とアリアを歌います。様々なドラマを経て、ゆっくり下降する、祈りにも似たコーダに至ります。第17番と共にノクターンの双璧であり傑作です

9.ショパン 「スケルツウォ 第2番」
彼のスケルツウォは最も有名で、優雅さやロマン的な転調などで、人気を集めています。ショパンの弟子レンツによると、印象的な三連符モティーフとフォルテシモの和音による、第一主題から始まるこの曲について、「これは問いかけでなくてはならない。また、死者の家でなければならない」と、レッスン中のショパンは語ったといわれています。

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