11th定演 第2部 解説

1.ドビュッシー 『ベルガマスク組曲』 から 「第2曲」(メヌエット)
曲頭に「極めてデリケートに」という指示があり、はっきりしない揺れ動く感覚です。巧みな教会旋法で、バロック以前の軽やかな古楽器のニュアンスが大切にされています。最後はホルンの重層的な響きで、荒々しくならない程度に盛り上がり、弱音の古めかしい合奏の後は、グリッサンドで霧の中に消えていきます。

2.ショパン 「ノクターン 第2番」
この曲は最も一般的に愛されているノクターンの一つです。ゆったりしたワルツ風で、優雅なサロンが目に浮かぶようです。美しいコーダも魅力的です。メロディーは再現の度に装飾的に変奏され、イタリア・オペラの装飾的歌唱からの影響が見られます。ベルリオーズの元婚約者で、ピアノ製作会社プレイエル社長カミーユ・プレイエルの妻マリーに献呈されました。

3.シューマン 『幻想小曲集』 から 「第7曲」(夢の縺れ)
明るく軽やかな練習曲風で、中間部の輪恩以外の部分は16部音符の細かい恩恵で奏でられます。右手の4と5の指を交互に動かす箇所が非常に多く、とても弾きにくいので、タイトルを皮肉って、「指のもつれ」と呼ばれることすらあります。それでも、鮮やかに夢が交錯する魅力的な曲なので、単独で演奏される機会がとても多い曲です。

4.ベートーヴェン 「ピアノソナタ 第27番」 から 第1楽章
この曲を献呈されたリヒノフスキーは妻を亡くした後、歌手・シュトゥンマーに恋したものの、兄からの身分差別で結婚は許されず、兄の死後漸く二人は結ばれました。ベートーヴェンはそのことを、音楽にしたと伝えられています。第一楽章に『「頭と心臓との闘い」と書くべきものだ』と語ったといわれています。

5-1.ショパン 『24の前奏曲』 から 「第15番」(雨だれ)
「雨だれの音の中で、涙を流しながら素晴らしいプレリュードを弾いていた」というエピソードから、1曲目はそう呼ばれています。
5-2.ショパン 『練習曲 作品10』 から 「第12番」(革命)
対ロシア蜂起の敗北を聞き、怒りと悲しみとともに作曲した「革命」では、感情のうねりのような左手の上で、右手が力強くメロディーを奏でます。

6-1.スクリャービン 『24の前奏曲』 から 「第11番」
1曲目は、ショパンの『24の前奏曲』にならった曲集からの甘美な曲です。2曲目は、ショパンの練習曲集を意識した12曲の曲集からの曲です。
6-2.スクリャービン 『練習曲 作品8』 から 「第9番」
多様な音価は両手のオクターヴにポリ・リズムをもたらし、非常に幅広い強弱があります。コラール風の中間部では、左右の拍のずれが浮遊感を生み出します。

7.ショパン 「ワルツ 第9番」(告別)
彼が曲を贈った相手、マリア・ヴォジンスカとの恋は、結婚寸前までいきながら結局成就しませんでしたが、彼女はこの曲を後年「別れのワルツ」と呼び、愛したといわれています。一拍目をぼやかすかのような、半音階下行のアウフタクトによる引き出しは、はっとするような美しさと色気を醸し出しています。甘く切ないワルツです。

8.ラヴェル 「亡き王女のためのパヴァーヌ」
ラヴェル自身が「シャブリエからの影響」や「形式が貧弱」といった点を指摘していますが、美しいメロディーとともに、五度の響きなど、後年の作風を思わせる個性も垣間見られます。文学的なタイトルは「単に語呂の良さ」からの命名で、ルーブル美術館のベラスケス作「王女の肖像」から着想を得たといわれています。

9.シューマン 『蝶々』 から 「仮面舞踏会、ヴァルト、仮面、ヴィーナ、仮面を脱ぐ」
ジャン・パウルの長編小説『生意気盛り』の、仮面舞踏会を音で表わそうと、この曲集で試みたと、シューマンは家族宛の手紙に書いています。夢想家のヴァルトと、情熱家のヴルトという、対照的な性格の双子の兄弟が同じ女性に恋をし、彼女がどちらを選ぶのかを2人は見極めようとします。

10.ショパン 『練習曲 作品10』 から 「第5番」(黒鍵)
当代最高のピアニストとして敬意を表し、作品10はリストに献呈されました。ショパンは高度な音楽と技巧を不可分に結び付け、ともすれば無機質になりがちな練習曲を、一つの芸術作品にまで高めました。右手の殆どが黒鍵でペンタトニックのため、どこか東洋的に響くこの曲では、白鍵を弾くのは66小節目の和音に含まれる一音だけです。

11.ドビュッシー 「喜びの島」
絵画「シテール島への巡礼」に影響されて、この作品は作曲されました。エーゲ海のクレタ島の北西に、シテール島はあり、愛の女神であるヴィーナスの島とされています。この曲は『ベルガマスク組曲』に入る予定が、出版社の都合で単独で発表されました。煌くように豊かな色彩の細やかな音を連ね、幻想的な愛の歓びを描き出しています。

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